今週の書評で気になった本 5月第1週

5月5日(日)神奈川新聞書評欄より


書名:町の本屋という物語

著者:奈良敏行

編集:三砂慶明

出版社:作品社

価格:2,420円(税込)

ISBN:978-4-86793-013-7

2023年4月、鳥取県にあった定有堂書店が閉店した。

店主である奈良敏行さんが開店以来43年の間に各種メディア(ミニコミとかウェブサイトとか)で発表した文章、講演をまとめたものがこの一冊になる。


私はこの店のことを知らない。名前は伺っていた、鳥取にすごく良い本屋があると。こういうシーンで語られる「すごい」とは何がすごいのか、存外その中身は千差万別で深度も様々だ。定有堂書店の場合は、「町の本屋として非常に質が良い」と言ったような文脈で耳にすることが多かったように思う。

町の本屋。とてもキャッチーなフレーズであり、多用されている場面をよく見かける。内実がそれに伴って発信されているかは時折疑問に思うこともある。そもそもな話になるが、「町の本屋」に何を求めているかが非常に多層的であり、当然それは小規模であればあるほど適合する層が薄くなる。ではどれを適えば町の本屋と言えるのか。薄氷のような一層でも適えば町の本屋なのか。その場合に想定される(そしてされない)町とはいったい何か。

自分自身がそのようなことをしているためか、そういうことをよく考える。


今回の書評は往来堂書店の店主が執筆しているのだが、その中で定有堂書店を「店を訪れた人が決定的な一冊に出会い自分自身を取り戻すことに力を貸す」お店であるとしていた。

一度も伺うことが出来なかったことを強く悔やんでいる。その一方で、ならば今自分が住まう地域の中で、同様のことをしている人がいないのか、それを考える。自分はその中でどう振舞うのか。

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