今週の書評で気になった本 5月第2週

5月11日(土)毎日新聞書評欄より


書名:承認をひらく 新・人権宣言

著者:暉峻淑子

出版社:岩波書店

価格:2,530円(税込)

ISBN: 978-4-00-061636-2

承認という言葉が、いつの間にか一般的に使われるようになったように思う。

とあるアニメで主人公はしょっちゅう自己承認の渇望を口にして悶絶していたが(これだけではどのアニメなのか特定できない)、自分が高校生の頃を想起するに、「承認欲求」という言葉を日常会話の中で振り回していた覚えはない。たとえそういったものを求めていたとしても、言葉としてそれを固定化し当然得るべきものとはしていなかった、ように思う。きっとそれはSNSなどの登場によって、見えない膨大な他者からの可視化された賞賛を数値として享受できるようになったからなのだろう。学校のテストは100点までしかもらえないけれど、いいねの数は万を超えてなお果ては無い。


評者の伊藤亜紗は「他者という鏡に映すことで自分を知り、生きていることの意味を自覚できる。承認の病は鏡の歪みであり、鏡の歪みは社会の歪みである」と説く。

承認がいともたやすく付与され、あるいははく奪されることをよしとしている社会は、果たして健康なのか。その鏡は歪んではいないだろうか。

社会生活を営む中で、承認は不可欠のものだ。他者の存在がいるからこそ社会は成立し、そして承認を必要とする。そこに存在する承認のあるべき形とは。


次の仕入れで入荷する予定です。


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