今週の書評で気になった本 12月第3週

12月16日(土)毎日新聞「2023この3冊」加藤陽子・選

12月17日(日)神奈川新聞書評より


書名:家族と厄災

著者:信田さよ子

出版社:生きのびるブックス

価格:2,090円(税込)

ISBN: 978-4-910790-11-4

↑出版社ページへのリンクが貼れなかったため、本書の元となるエッセイを連載していたページをリンクさせてあります。


タイトルからして物々しい。

コロナ禍によって垣間見えてきた、これまで緞帳の向こう側にあった家族の姿。とりわけその"家族"の中で女性が今なおどのような地位に置かれているのか。なお話に登場する女性は実在しない。著者が出会った多くの人たちから造形しなおされたものとなっている。

これまでの間、数年どころじゃなく数十年、ずっと無理をしてきた"家族"の体制が歪みを見せている。それでうまくいってきたと思っているのは結局うまくやってきた人たちだけであって、その足元には誰それとも認識させられない数多の人たちが横たわっている。社会が順風満帆であるなら、それでよかったのだろう。何もよくないはずだとしても、見向きもしてもらえなかった。コロナ禍によって、その邁進に強制的な待ったがかかった。社会が立ち止まって考える契機が生まれてしまった。今やあたかも元通りであるかのように振舞われ、黙殺されたその間隙から垣間見えた、社会の歪み。

それをまた、見て見ぬふりをすることはとても容易い。何せ今まで通りでいいのだから。でもたとえそれを見て見ぬふりとしていても、そこに在ることは変わらない。


やや穿った見方にはなるが、時として「家族は厄災となる」と思っているので、このタイトルにはそういった意味も含まれているのだろうかと邪推してしまう(現に最初のエピソードはなかなか鮮烈な話だった)。

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