今週の書評で気になった本 11月第4週
先週は自宅のネット回線不調のため更新ができませんでした。
ので二週間分まとめての更新となります。
11月25日(土)毎日新聞書評より
書名:人種差別の習慣 人種化された身体の現象学
著者:ヘレン・ンゴ
訳者:小手川正二郎・酒井麻依子・野々村伊純
出版社:青土社
価格:3,080円(税込)
ISBN: 978-4-7917-7595-8
何の気なしに定義され、または定義し、そして日常の中で無造作に登用される「人種」。
人が「人種」として見られ、扱われるのはどういうことか。
「人種差別」は何も苛烈なヘイトスピーチを叫ぶレイシストだけの専売特許ではない。差別を体現する行動、仕草、言動は、知らぬ間に(というのが何とも欺瞞的な言い方ではある)当たり前の日常の中に浸漬している。
書評でも引用されている、ある黒人男性が夜道を歩くときに自らの無害性を示すために白人カルチャーにちなんだ音楽を口笛で吹くというエピソードは、ややもするとコミカルさすら漂ってきそうだが、ジョージ・フロイドの話をする間でもなく、そこには己の文字通りの生命がかかっている決死の行為と言える。
表立っては出てこない、その分日常のあちらこちらにあるふとした行為。その瞬間にピントを合わせて世界を見ると、きっとそのぎこちなさが見えてくるのだろうと思う。
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