コインランドリー

我が家の洗濯機には風乾燥機能がついている。いわく、脱水機能と同様に槽を高速回転させると共に通気口から外気を取り込み洗濯物に当てることで、通常の脱水後の状態よりも洗濯物がより乾きやすくなります、みたいなものらしい。なんとなくわかっちゃいたけれど、当然通常の乾燥機ほどの効果は全く期待できず、つまりこの連日雨天続きで洗濯物が乾かないときには、もはや焼け石に水という程度の機能だった。


ということで、とても久しぶりにコインランドリーへ行くことにした。

歩いて程ないところに、24時間経営のコインランドリーがある。なんて便利な!と思っていたものの、今のところに越してきて早2年弱、今まで一度も利用することはなかった。家に洗濯機があってそこそこ定期的に洗濯する習慣がある以上、お世話にならないのも当然と言えば当然だ。そもそも高い。洗濯と乾燥で合わせて1000円かかった。日常で使うにはさすがに厳しい値段。

幸い夜には雨が上がっていた。せっかく乾かした洗濯物が雨でまた濡れてしまったら元も子もなくなる。

遅い時間だったけれど、ぽつぽつとお客さんがいた。せっせと大量の洗濯物を畳んでいる人、回っている洗濯機の前で両手を腰に当て佇む人、車に戻ってスマホをいじっている人、などなど。昔見た好きな映画にあやかって、僕は本を読むことにした。あいにくその映画で読まれていた本は持っていなかったので、吉行淳之介の『暗室』を持っていった。いつの間にか我が家にあった1冊、結構集中して読めたけれど残念ながらあんまり肌には合わなかった。やっぱり無理にでも映画のを追従して町田康をもっていくべきだったか。どこかにはあるはず。


家にある洗濯機は相当小さい部類のもので、確か容量が5.5kgのものだった。毛布でも洗おうものなら、果たしてこれはちゃんとお水まわってくれるのだろうか、と思うほどにギリギリだ。先にも書いたように、お情け程度の乾燥機能はついているけれど、ひのきのぼうくらいの頼りがいしかない。

普段そんな洗濯ライフを送っているものだから、大容量で高出力の洗濯機・乾燥機が立ち並ぶ最新鋭のコインランドリーは、一見とても魅力的だ。魅力的、というよりは安心感がある、と言った方が近いかもしれない。それに何より間違いなく便利だ。洗濯物放り込んでお金を入れてスイッチ押したらいいのだから。自宅で所有するには余りある力を持ったものをお手軽に利用できる。

ただ、先の映画や読んだことある漫画のせいか、もっとその土地に土着したコインランドリーの方が、個人的には魅力を感じる。それがたとえ家庭用洗濯機・乾燥機に毛が生えた程度のものであったとしても、というかもうそれそのものじゃないかってくらいの場所だとしても。

そういう都合のいいノスタルジーを感じながら、文明の利器による最大限の恩恵にあずかった夜だった。でもズボンは乾かなかった。厚物はだめだな。

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