開店(してました)日記

去る4月4日の日曜日、茅ケ崎のBOOK PORT CAFE店内にて新刊書店「こんぶトマト文庫」を開店しました。

大体こういうものってえてして開店当日だとかに書くものだと思うんですけど、なんやかんやとしている間にいつの間にか1週間経ってました。何かを成した気もするし、特にそんなことはなかった気もしてますけど、真っ新なところから自分が選んだ本が何冊か誰かのもとへ行ったことは間違いのない事実で、それは結構嬉しいものだったりするわけで。


そんな大それたことを始めたつもりは毛頭ない。生まれ育ったわけでもない茅ケ崎という土地で、ひょんなことから(本当にこの表現がしっくりくる)ブックカフェの常連になり、そしてあれよあれよという間に(本当に本当にこんな感じ)新刊を仕入れて小さい書店を開くことになった。それはとても恵まれていることであると同時に、とても畏れ多いことでもあると思っている。「私はこれがやりたいのだ!」という明確な意志と不退転の決断があって始めた出来事ではなく、むしろ現状「じゃあとりあえず3か月やってみて、これ無理だなってなったらそこで終了すね」という、なんともあっけらかんとしていてめちゃんこ可逆的な状態でスタートしている。まず基本的に他に仕事を持った上での本屋、つまり副業としての本屋であるし、資金にしても、少しばかり貯まっていたものを初期費用としてはたきはしたけどどこかから借りてはおらず、残りは生活余剰資金で回していく算段にしている。


そんなくらいの感覚でやっていいものなんだろうか、本屋。それは自分が一番思っている。

年々本屋の数は確実に減少の一途を辿っていて、一昨年にはついに全国で本屋の数が1万店を割った。現存する本屋も苦しい状況の中で各々創意工夫を凝らして本を売っている。もちろん近隣の辻堂-茅ケ崎エリアにも本屋はあるし、BOOK PORT CAFEに馴染みのあるお客さんが足繫く通う本屋もある。僕がつつましくも商いとしての新刊書店をしていることは、それらの本屋の顧客を直接的に奪ってしまうことになるのではないか。そんなことを考えた。


そんな大それたこと気にするような規模じゃないだろ、という根本的な突っ込みは横に置くとして、今のところそれは気にするような話ではないと思っているし、むしろもっとこれくらいの規模のものがいたるところに出来たらいいとも思っている。


「本が欲しい」という気持ち(経済の規模)は現時点のものが最大値というわけではなくって、増大させることが出来る。近所に本屋があればちょっと寄ろうかという気になるし、店頭になくともそこで注文が出来るのならじゃあこれを注文お願い、ってなる事だってある。これは決して都合のいい絵空事じゃなくて、実際にこの1週間の間に数件ほど頂戴した事案なので、自信持って断言できるのです。あるよ、そういう事案。中にはBOOK PORT CAFEに初めて来られたお客さんの注文という、何重にもビックリが重なったケースもあった。とても嬉しい話だしいよいよ身が引き締まる思いです。

それに大手の本屋ではなかなか埋もれてしまう(もしくはそもそも置かれない)本にスポットを当てることで、普段本を買ってる人にも「えっこんなのあったんだ」と気付いてもらうことが出来る。なにせ(一時よりは減ったとはいえ)新刊書籍は年間7万点以上出ている。その中に良い本があったとしてもアッという間に次の新刊に押し流されてしまってどこかへ消え去ってしまう。良いものは良いと言い続けたいし、出来る限り多くの人に届いてほしい。

勿論反対に、「本が欲しい」という気持ちがマイナスの要因によって減少することだってある。かつて神戸にあった海文堂書店という本屋が無くなった、その後の記事を読んだことがある。町にあった名物書店が無くなり、常連だったお客さんは他の本屋かそれともアマゾンで本を買うことになったのかと言うと、本を読まなくなったそうだ。ネットに明るい人だと「そんなのアマゾンで買えばいいじゃん」となるだろうけれど、誰しもが当たり前に出来る話ではない。ネットは万能ではないし、必ずしも生活の基盤たり得る存在ではない。でも日常通る道沿いにある本屋は、その人の生活の基盤たり得る。僕はそう思う。


そしてそういう場である本屋が減少傾向にある昨今、わざわざ別の本屋のお隣に作ったわけでもあるまいし(まぁ隣にあってもそれはそれで面白くなりそうな気がしなくもないけど)、遠慮せずにガンガンいこうぜのターンですよ、今の時代。

ということでもっとみんな気軽に本屋始めたらいいと思う。


こんぶトマト文庫のふみくら

本屋「こんぶトマト文庫」のホームページです

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