5月8日(木)19時42分

どういう経緯でそうなったのか全く覚えていないのだけど、昔東京へ遊びに行った際、特に目的地として定めていなかったにもかかわらず、坂本龍一の展覧会を観に行く流れが出来たことがある。

いつのことだったっけ、そしてどこでやってたやつだったっけ、といった肝心なことは具体的に覚えておらず、多分季節は冬で、薄ボンヤリと覚えていた「初台」という地名から頑張ってあと引きした結果、東京オペラシティで2017年12月に開かれた「坂本龍一 with 高谷史郎|設置音楽2 IS YOUR TIME」という展覧会のことだとわかった。企画名を言われてもピンとは来なかった。

当時は神奈川ではなく名古屋に住んでいて、そもそも何か別の用事があって東京まで来ていたと思うのだけど、そっちの用事のこともやはり覚えておらず、一体わざわざ東京まで何の用事だったのだろうか、ということを悶々と考えつつ展覧会の開催日を眺めていたら、ああ、と思い出した。そういえばそういうことをしていた時分だったなと独り言ちた。話がごちゃつくので丸ごと割愛する。

その展覧会の初日、坂本龍一のトークショーも行なわれていた。先着でチケットを配布するとのことだったけれど、早朝に夜行バスで東京に降り立っている身としては、特に関心があるわけじゃあないものだとしても10時からの配布に備えて早めに並ぶことなど造作もなかった。むしろちょうどいい時間潰しだった。経験したことがある人ならわかると思うのだが、夜行バスで遠方に行ってまず困ることは、早朝はどこにも立ち寄れないことだ。朝からやっているチェーン店やコンビニ、コーヒーショップ、くらいが関の山で。早くても9時、大体が10時にならないとどこも開いていない。本屋も大体がそれくらいの時間からになる。朝イチで予定があるといったことならいざ知らず大抵はそうではなくて、だから夜行バスに乗るたびに、行きついた先のどこで時間を潰すべきかを毎度苦慮していた。さらに余談。名古屋駅近辺の定番夜行バス降車場・ささしまライブ、あそこから名古屋駅へ向かう途中にあったマクドナルドはレジャック閉店と共になくなってしまっていたのはショックだった。大勢そこに吸い込まれていくものだから、早朝なのに大変込み合っていた。当然活気はない。

そんなわけでトークショーのチケットを難なく取り、時間になって改めてオペラシティへ行ってトークショーを見た。席は最前列の上手あたり。坂本龍一がよく見えた。トークの程度に対して自分の理解が程浅く、ただただ「そこに坂本龍一がいるよ」という気持ちで座っていた。ただ、よく覚えているのは、坂本龍一が音響設備一般に対して「スピーカーが2台あって、その二つから音が出ているのに、間の何もない空間から音が聞こえているように感じるのが気持ち悪い」といった主旨のことを言っていたこと。それを貴方が言ってしまうか、と思った。いっそ貴方だからこそ言うのか、とするべきか。

そんなことを、スピーカーに挟まれたディスプレイを眺めながらふと思い出した。

0コメント

  • 1000 / 1000