今週の書評で気になった本 5月第3週

5月19日(日)神奈川新聞書評欄より


書名:みんなの〈青春〉

著者:石岡学

出版社:生きのびるブックス

価格:2,320円(税込)

ISBN:978-4-910790-17-6

ジャンププラスで連載中の『正反対な君と僕』が好きで。

見た目はとても地味でクラスの隅でおとなしくしていそうな風貌と性格の谷くんと、持つもの全てがカラフルでピンク色の髪の毛した(校則すごい)ちょい悪俳優大好きな鈴木さんを中心とした恋愛漫画。そのほかにもタイトルの通り、いろんなところが「正反対」な青少年たちが、自分が抱えている感情や相手に対しての気持ち、上手いこと名状できないそれらに思い悩み、向き合い、ひとつずつほぐして、時には気持ちの赴く方へと猛進して人と関わっていくことを選んで成長していく物語です。


で、なんで私がこれ好きかと言えば、多分それは自分にも「名状できない感情とか気持ちに振り回され、結果何も思慮することなく盲進してしまって大失敗した青春」があるから、だと思うんですよね。あります。ありますよ。そういうの。だからその都度立ち止まり自分や相手の気持ちを言葉にすることを怠らない彼らの姿がとても眩しく見える(一方で「一般高校生がこんな言語化うまくてたまるか」とも思う。我々はもっとあほだった)。


この『みんなの〈青春〉』は、どうやらそんな青春コンプレックスを抱えている人に読んでほしい一冊とのこと。

著者いわく、青春をテーマに本を書いた動機は「私自身の中にあるコンプレックスというかルサンチマンというか、そういうある種のドロドロした怨念である」と言っている。考えればそうなのだけど、青春に対して一切の呵責を感じない人はきっとそれを(個人的体験に対してはさておき)総体として省みることを(たぶん)しないのであろう。そこに何かの引っ掛かりを感じる、劣等感を抱いている、ぶっちゃけあいつら憎たらしい、といった濃淡様々な暗めの感情があるからこそ、「青春ってなんだよ」ってオトナになった今でも考えてしまうのだろう。


余談ですが、じゃあ私の青春ってやつがそんな周囲へのコンプレックスに満ちたもので終わったのかと言えば、多分そういうものではなくて、というよりそもそも「僕の青春」は高校時代ではなくてそのもう少し先にあった時期なのだろうと、今振り返ると思います。そういった「何も青春時代とは高校時代の専売特許ではないだろう」といったところも触れられていたら嬉しいなと思う(目次を読む限りではありそう)。


さらに余談、というより勝手に宣伝。現在『正反対な君と僕』は5月26日まで全話無料となっているようです。青春時代に名状しがたい感情に振り回されその言語化に至れなかった人はぜひ。

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