5月12日(金)23時06分

電車とバスで旅に出たい。


性格上、あちらこちらへ自由気ままに立ち寄れる車や原付の方が、旅程を組む時にとても都合がいい。昔あった動物占いとやらでは、「みんなで行動していたはずなのに気が付けばどっかに行っている」ペガサスだった。幼心に大変納得した覚えがある。

しかし車にしても原付にしても、そこには運転する人が当面は必要となる。あいにくと運転手を雇い入れるほどの経済力もないので、自らの手と足で運転せざるを得ない。そして運転免許を保持されている方ならきっとお判りいただけるだろうが、運転中は真正面以外見てらんない。

たとえそこが景勝地にしろ見知らぬ街中にしろ魅惑的な光景が車窓に広がっていようとも、運転手に許される視界は9割がた前方に限られる。運転技能的な話をするなら、本当に100パーセント前方しか見ていない、という運転はかえって危なっかしい。ある程度周囲を見渡して異状は起きていないかを頭に入れつつ、前方へと向かう必要がある。後ろから何やらヤンチャな車が来ているなァ、などと思ったらさっさと先に行ってもらったり、側道から進入のタイミングを伺ってる車がいれば前後を伺って場合によっては先に入れてあげたり、などなど、前以外にも見ているものはたくさんある。

しかしそのどれもが「安全に運転するため脳みそに入れとく情報」として視界を占有するものであり、決して「ややッ何やら面白い店があるぞ!入ってみよう」などという、超個人的な欲求を満たすためのものではない。まぁ入るけど。何にしても「情報を取り入れるための視界」であり続けるため、運転中の眼はなかなかに疲れる。


電車やバスは、運転のための視覚と頭を放り投げていても、おおよそ確実に目的地へたどり着ける。目をつむって音楽を聴いていることだってできるし、手元の本だけを見ていることだってできる。車窓から遠くを眺めて「あの家変な形してんな」とか「鉄塔って高くない?」みたいな、何も意味が内包されない思考で頭をいっぱいにすることだってできる。基本的に嗜む人ではないから対象外だけど、お酒を飲んでいても(法的には)問題ない。


どこに行きたいだろうか。

行ったことないところにも行ってみたいし、以前訪れたことのあるところへ行ってみたい気持ちもある。

博多へは一度訪れたことがある。ただ前日の夕方にハイエースで名古屋を発って一晩走り続けて早朝に到着しバンドをスタジオに送り届けてから一休みしてそのままリハ入って本番やって打ち上げ行ってホテルにインして翌朝博多を発つ、という、バンドの運転手手伝いとして行った日だったので、あまり自由に行動はできなかった。中洲のTSUTAYAが4時までやっていたことと2時現在でもお客さんがいたことは覚えている。去年閉店したそうだ。ちなみに朝昼晩朝と4食すべてラーメンだった。今だったら意地でも日程を空けてキューブリックさん辺りに行くのだろうか。でもおそらく、その日の自分の役割を優先してそれを全うする方向に動くのだろうと思う。

行ったことない場所、と言えば、その帰り路に広島で降りて平和記念資料館へ行った。車中の誰もが行ったことなかったからだ。バンドメンバーで一番ヤンチャするタイプが突発的に発案し、そして一番落ち込んで館から出てきた。

一度乗ってみたいのは夜行列車。恩田陸の小説で夜行に乗って鹿児島へ向かう情景が描かれていたのを覚えている。サンライズ出雲に乗りたい。そして出雲そばを食べたい。具体的に出雲そばってどういうものなのか知らないけれど、桃鉄DXをサンタさんからもらった身としては、そういうのはさておき出雲そばを食べてみたいのだ。そして特に何をするでもなく帰りたい。


kashimirさんの『ぱらのま』(白泉社)という旅漫画がとても好きで、先日出た6巻も買った。一人旅をする者のツボを心得ている漫画で、旧き裏道を散策することが好きな人にもおすすめしたい一作。

それを読んでいたらこんなことを思ったし、思いつつ書いているから途中また読み直したりしていたら日を跨いでしまった。

やるべきことは終わっていない。嗚呼ん。

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