5月11日(木)23時33分

先の日記で電工の話をしていて、ふと思い至ったことがあるので別途追記。



電気の世界、電気工事の世界というのはとてもかっきりしている。

例えば、電路には接地側と非接地側が存在していて、ランプやコンセントに結線するときには必ず接地側に白色の電線を差さなくてはならない。間違って黒や赤や緑を差してはいけない。黒は非接地側に差す色であり、緑は接地線として使用するものでなくてはならない。等々。

これは個々の好みや裁量が入ることを一切認めない、厳然たる決まりとして存在している。そこに確実な指標が存在しないと、該当の施工箇所は触った本人しかわからないものとなってしまう。もしその人がいなくなったとき、そしてそこを施工する必要が生じたとき、アンタッチャブルな状況だと大変に困る。だから決まりが存在しているし電工をやる以上はそれに則らなくてはならない、とされている。

このところはそういうものばかりを相手にしている。


一方で、こんぶトマト文庫として接する本の世界は、言うなればとても曖昧だ。良い本を売っていきたいと思っているけれど、まず「良い本とはなんだ」という問いが生じる。この時点で電工のような一本道になることは有り得ないことが容易に想像できる。この問いひとつに対する解は瞬時にあちらこちらへ分かれていき、そのどれもが正解な気もするし不正解な気もするし、はたまたその両方かもしれないがいやそもそこに正解も不正解もないんですよとなりそうな、ええいわからん!となる。私自身にとっての「良い本」はこれだと言えるし同時にこんぶトマト文庫で販売している本についてもこれは「良い本」と言うことは無論できる。あくまでそれを一般的なところまで広げるとたちまちこうなる、という話だ。

個々人の好みや裁量に時代や生活背景、最近誰かがお薦めしていた、ずっと前から気になっていた、仕事や趣味で必要としている、ちょっと調べものをする、周りの人との話題作り、見た目が綺麗、懐かしい、特に理由はないけれど引っ掛かった、などなどなどなど。

本を選びそれが「良い本」であると思う理由はおおよそ無限に存在する。そこには万人に共通する不変の指標など存在しようがない。


ルールを順守することを尊ぶ世界と、標なき中を進んでいく世界。

そのどちらもに魅力があるし、そしてそのどちらをも自分に内包させる営為は、どこか矛盾めいていて楽しい。

こんぶトマト文庫のふみくら

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